久しぶりの更新です。今回は裁量トレードについてです。私は普段FXではアルゴリズムトレードしかせず、裁量トレードは滅多に行わないのですが、最近の南アフリカランド急落を見て裁量でランド円のポジションを持ってみました。さまざま分析していると、今は非常に特異な状況であることが浮かび上がってきます。
ランド円概要
南アフリカという国は、物理的にも心理的にも日本からは決して近いとは言えない国ですが、こと為替取引に関して言えば日本人は南アフリカランドという通貨への関心は比較的高いです。それはランドが高金利通貨で、スワップを狙った取引が多く行われていることによるものです。レバレッジによりますが、ランド円を持っているだけで年間で数%~100%資産が増やすことができるため人気があり、取引数量ベースでFXの通貨ペアの中でドル円に次いで2番目の取引量を誇っています。※参考:通貨ペア別取引数量(くりっく365)
ただし、高金利の裏には相応のリスクが潜んでおり、一歩間違えると大変な危険を伴います。高金利を継続するということは言い換えれば高金利を続けないと誰も南アフリカランドを買わなくなるということの裏返しでもあるからです。もしかすると高金利の副作用が起こっているのがちょうど今、この12月かもしれないということです。
平均8.35円/ランドでショートポジションを保有
2015年9月以降、心理的なサポートラインだった8.5円を明確に割り込んだのを見て、ショートポジションでエントリー。その後立て続けに逆指値の売り注文を仕掛けておいたものが、暴落と共に全て引っかかった形になりました。当初はジリジリと下げていく展開を予想してエントリーしたのですが、結局1週間足らずで11%を超える下落を記録したことになり、まさかこれほどの急ピッチで下落が進むとは思っておらず驚いています。これほど急激に下落した要因を探ってみると数多く浮かび上がってきます。
■多すぎる下げ要因
・財政再建に定評のあった南アフリカ財務大臣が突然解任されたこと。
・原油の暴落。天然資源繋がりで金の産出国である南アフリカのランドが連れ安になっていること。
・もともと流動性が高くないこと。
・米ドルの利上げ観測。安全なドルを買いたい人がリスクの高い新興国通貨を売る流れがあること。
・ヘッジファンド等によるミセス・ワタナベ狩りの可能性(後述)
・財政再建に定評のあった南アフリカ財務大臣が突然解任されたこと。
・原油の暴落。天然資源繋がりで金の産出国である南アフリカのランドが連れ安になっていること。
・もともと流動性が高くないこと。
・米ドルの利上げ観測。安全なドルを買いたい人がリスクの高い新興国通貨を売る流れがあること。
・ヘッジファンド等によるミセス・ワタナベ狩りの可能性(後述)
誰もが知っているように、普段は為替がどちらに動くかを予想するのは容易ではないわけですが、現在の南アフリカランドほど下げ要因ばかりが偏った相場も珍しいです。流動性が低いが故、突然の暴騰の可能性ももちろんあるにはあるわけですが。
「ミセス・ワタナベ狩り」の様相
日本人の個人投資家の総称として「ミセス・ワタナベ」という呼び方をすることがあります。そもそもFXが一般国民にまで深く浸透している国というのは世界的にも珍しく、「日本では専業主婦までがFXをやるらしい」という驚きの意をこめて、海外では日本人投資家全体をミセス・ワタナベという呼び方がされるようになったそうです。
今のランド円相場は、ミセス・ワタナベがヘッジファンドや機関投資家に狙われる材料が整ってきているようにも見えます。
■ミセス・ワタナベの特徴
・トレンドに対して逆張りをする傾向がある
・クロス円通貨ぺアはロング保有を好む傾向がある
・高めのレバレッジで取引する傾向がある(ギャンブル嗜好性)
・勝率が高い反面、利益は小さく損失は大きくなる傾向がある(利小損大)
・トレンドに対して逆張りをする傾向がある
・クロス円通貨ぺアはロング保有を好む傾向がある
・高めのレバレッジで取引する傾向がある(ギャンブル嗜好性)
・勝率が高い反面、利益は小さく損失は大きくなる傾向がある(利小損大)
これらの特徴が相まって、マネーパートナーズ社提供のデータによると、12月10日現在でランド/円のポジション保有比率はロングが98.89%,ショートが1.11%という極端な偏りを見せています。
-12月10日現在の売買比率(マネーパートナーズ社)
いくらスワップが高くてロングに妙味のある通貨ペアだとはいえ、下落トレンド真っ最中にこの偏った様はちょっと異常だと言わざるを得ません。
加えて、新規ポジションはいまだにロング優勢であることがヤフーファイナンススタジアム等を見ると読み取れます。
-ランド売買履歴(ヤフーファイナンススタジアム)
当然ながら5.0~8.0円/ランドあたりの価格帯においては、新安値を更新するたびに大量のロスカットが誘発されることになります。
ヘッジファンド・機関投資家がこれを狙ってくる可能性は十分にあり得ると考えます。
つまり、
ミセス・ワタナベの大量の買い注文に売りをぶつけて、売り建玉を増やしていく
→ある程度下がったところでヘッジファンドは一層売り圧力を強めていく
→ミセス・ワタナベのロスカット損切り売りをたくさん巻き込みながら壊滅的な下落が引き起こされる
→十分に下落したところでヘッジファンドが決済し、下落トレンド終了(セリング・クライマックス)
という流れです。これだけ個人投資家が買い越しているにも関わらず下落が止まらないということは、裏を返せば大量に売り越している誰かがいるということになります。→ある程度下がったところでヘッジファンドは一層売り圧力を強めていく
→ミセス・ワタナベのロスカット損切り売りをたくさん巻き込みながら壊滅的な下落が引き起こされる
→十分に下落したところでヘッジファンドが決済し、下落トレンド終了(セリング・クライマックス)
ところで8月24日のチャイナショックではドル円がわずか数分で119円→116円と3円もの下落を記録しました。このような、近年時折見る『ごく短い時間での急激な円高振れ』も大ざっぱに言ってしまうとこのような流れになっている可能性が高いです。ランド円はドル円と比べて流動性が低いので、もしランド円で同じようなことが引き起こされたらどうなるでしょうか?もしかするとさらに恐ろしい下落が待っている可能性は否定できません。
これはいろいろ考えられる今後のシナリオのうちの一つにすぎませんが、恐らくこれが最も過激で危険なシナリオではないでしょうか。
今後取りたい戦略
ランド/円はメジャーな通貨ペアと比べて流動性が非常に低く、途轍もない下落・上昇が起こる可能性があります。散々言われていることではありますが、新興国通貨というのは非常にリスキーな投資対象だということをまざまざと見せつけられた最近の相場だったと思います。私は当面ショート保有、場合によってはショート建玉追加を考えていますが、突然0.5円、1円程度の暴騰が起こりうることも想定しておくことにします。とはいえ含み損を抱えた大勢のロング保有者がいるため、値が戻れば戻るほど売り逃げの圧力が強まることが予想され、たとえ直近で上昇トレンドが発生したとしても継続はしにくいと見込んでいます。では一体どこで下落が終わり上昇に転じるかという話ですが、○円まで落ちるといった具体的な数字は誰にもわかりませんし、予想するだけ不毛な話です。それよりは下落の速度に注目していた方がまだ予想の精度は高いと思います。私は手仕舞いの目安として、もしセリングクライマックスが観測できた場合は全て手仕舞い、ドテンでロングに切り替えることを計画しています。今の下げ圧力は相当強く、この数日だけでセリングクライマックス並みの速度での下落を何度も記録しているので、明確に相場が反転するターニングポイントになるためには、それこそ10分以内で0.5~1円ぐらいの強烈な下落が確認できないと判断を誤るかもしれません。一方、今後強烈な下げが見られなくなった場合は時間をおいて細かく決済していく予定です。
現在もロングを保有している人の方が多いとは思いますが、今後、南アフリカをはじめとしたアフリカ諸国は人口が増加することもあって経済成長の余地が存分にあることは間違いないですので、スワップを貰い続けながらロング保有をするという戦略は決して悪くないと思います。ただ流動性が低い通貨のため、メジャー通貨では考えられないような上下動が起こり得ますので、臨機応変にポジション調整するなどの対応をしないと大変危険です。ここ数年ランド円は9~11円/ランドのレンジで比較的安定した値動きを見せていたのですが、このレンジが基本でいずれここに戻ってくると思い込んだりしていると非常に危ないです。
2015年は為替相場全体を通してボラティリティがそこまで高かったわけではないですが、スイスフランショック・チャイナショックをはじめ、短時間での強烈な値動きが目立つ1年でした。1年の終わりに南アフリカランドで凄まじい変動が起こる可能性が少し出てきたように感じています。引き続きランド円相場の動向を見守りたいと思います。
※本記事はあくまで個人的な相場の見解です。取引を行う際は自己責任の下でお願い致します。